2020年 土浦日本大学高校 入試 国語 古文 口語訳

「徒然草」第231段「園の別当入道は、さうなき庖丁者なり」兼好法師

園の別当入道は、比類のない料理人である。ある人の家で立派な鯉を出したので、誰もが皆、別当入道の包丁さばきを見たいと思ったが、軽々しく言い出すのもどうかとためらっていた。別当入道は素早く状況を理解し機転を利かせられる人なので、「この頃、百日間、(神様に対して)毎日鯉を切る誓いを立てて鯉を切っております。今日切らないわけには参りません。ぜひとも引き受けましょう」と言って切ったそうだ。たいそうその場にふさわしく、趣のあることだと(その場にいた)人々は思ったと、ある人が北山太政入道に申し上げた。(北山太政入道は)「このようなことは、嫌味にしか聞こえない。『切るのに適当な人がいなければください。切りましょう』言えばなおよかっただろう。なぜ、百日の鯉を切ろうと(などと、わけの分からないことを)言うのだろうか」と、おっしゃったので、趣深く思ったと人がおっしゃったのを(私も聞いて)たいそう趣深く思った。
だいたい、趣向を凝らして趣深くなるよりも、趣がなくても素直なのが、勝っていることである。客人のもてなしなども、ちょうど折り良くなるように工夫するのも、本当に良い良いけれども、ただ、別段のことでもなく持ち出したのが、たいそう良い。人に物を与えるのも、何のきっかけもなく「これを差し上げます」と言ったのが、本当の真心である。

(続きの話)惜しむ由して乞はれんと思ひ、勝負の負けわざにことづけなどしたる、むつかし。
(続きの話の口語訳)惜しむふりをしてありがたがられようと思い、勝負に負けたことにかこつけて接待するのは、嫌味なものだ。

(語釈)
園の別当入道……藤原基氏(ふじわらのもとうじ)。検非違使(現在の「警察」)別当(現在の「長官」)に任じられるが24歳で出家。
庖丁者……料理人。料理名人。
さる人……大した人。抜かりない人。
北山太政入道殿……西園寺実兼(さいおんじさだかね)。太政大臣(現在の「首相」)。京都北山に屋敷があったところからこう呼ぶ。

Scroll Up